残りのライフは1ですか?

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「王太子様はAの角が少し丸みを帯びているんです。それにDやBはしもぶくれ気味なんですよ。でも、この2枚はそれがうまくいっていないし、こっちはAの角が鋭利すぎてるし、横棒が外に出てます。王太子様のは出ないと言うより、少し短いんです」 覗き込んでみていたエリノアが「ほほう」と声を上げ、カスティバルが目を丸くしている。 当の王太子様も感心して書類を見ていた。 「ということは、つまり」 と言うエリノアに、私は大きくうなづいた。 「これらの書類の王太子様のサインは偽物と言うことです!」 エリノアはにやりとすると王太子に顔を向けた。 「ここから先はあなたがなさることですわよ」 今までぼんやりとしていた王太子様の表情がきりっとしたものに変わる。 「わかっておる」 すぐさま、侍従や衛兵に指示を出し、逃げ出そうとしていた大臣たちを捕まえた。 そして。 大臣の中から不正を働いていたものがわかり、全員、降格や処罰が下された。 この騒動で、王太子が婚約破棄を言い渡す断罪劇もかき消えた。 どさくさに紛れて家に帰った私。 マリベルの両親なんて初めて見るが、二人とも優しいいい人だ。 これならここでの余生を静かに生きていけるはず。 と思っていたのだが。 「マリベル、よく来てくれた」 王太子様に呼び出され、行きたくないとも言えず、仮病も使えず、王城へと赴いた。 王太子様、アルバン・デリック・ボロウ王太子はキラキラした笑顔で私を出迎えてくれた。 そういえば、王妃になるルートってまだ生きてるんだろうか。それは勘弁してほしいんだけど。 と思っていると、王太子様から、 「マリベル! 君には助けられた。心より礼を言う」 横領事件のことらしい。 「あ、いえいえ」 とつい手をぶんぶんと横に振る私。これはいくら何でも貴族っぽくなかったわ。 焦って顔を上げると、困ったような顔した王太子が、 「あー、それでだ。エリノアのことなんだが」 「あっ! それは、王太子様とお似合いなのはエリノア様しかいません!」 「へ?」 「あんなにお綺麗で聡明で、王妃様になるべく生まれたような方ですよ。早くご結婚されないと、他の人に取られちゃいますよ」 原作では、カスティバルといい感じになりつつあったのよ。お話はまだ途中で完結してなかったけど。 だけど、お坊ちゃまの王太子にはああいう人が合ってると思うのよね。 目を見開いてこちらを見ていた王太子がいきなり吹き出すと、 「マリベル、何だか別人のようだな」 「え!? いや、そそそそそんなことは」 まさか転生者ってバレてないよね。 「君がそう言ってくれるならもう私から言うことはないかな」 そうつぶやいた王子は、 「エリノアから話があるそうだ」 と言って部屋から出ていった。
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