2人が本棚に入れています
本棚に追加
「エリノア・マクバード、お前との婚約を破棄する!」
王太子の声がホールに響く。よくある婚約破棄される悪役令嬢もの。
最初、どのお話なのやらさっぱりでただただ成り行きを見守っていた。
それが間違いのもとで私はあっという間に王太子とともに処罰され幽閉された。
「私って悪役令嬢物のヒロインってこと?」
幽閉されパニくりつつも話し相手はおらず、やっぱり何の話かわからない。
頭抱えていつのまにやら眠っていた。たぶん、眠ったはずなんだけど、気付くと、また断罪劇の真っ只中だった。
婚約破棄を告げる王太子の声がホールに響く。
ちょ、ちょ、ちょっと待って。
「あの」
私を庇うように立つ王太子に恐る恐る声をかける。
「大丈夫だよ、君をいじめたエリノアにはこの場から退場してもらうからね」
キラキラした顔で振り向かれてしまう。
「いえ、その」
ここっていったい何の話なんですか!?
と聞けるわけもなく。
壇上から見下ろすとそこには美しくも気高いオーラがびしびしと感じる悪役令嬢。こちらを見る瞳は夜空に輝く星のようで、吸い込まれしてまいそうだ。
「いやいやいや、あんた、あんな人を婚約破棄するなんてどうかしてない?」
と言ったつもりはなかったが、口から出てしまっていた。
やばい。
見ると、王太子は目が点。
「今何と?」
「いえ、あ、その」
「あんた?」
「あ、やば、聞こえてたか」
「な、な……」
口を開けてこちらを凝視する王太子を庇うように侍従らしい騎士が王太子の前に立つ。
「貴様、何者だ。あのマリベル・ベルドゥ嬢ではないな!」
「え? あ、いやマリベルですよ、マリベル」
ほらほらと手を広げる私に後ずさる王太子。剣を向ける騎士。
というわけで……
今回も別のルートで幽閉された。
最初のコメントを投稿しよう!