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ふと、俺の近くに気配を感じた。見上げるといけ好かない顔をしたおっさんが俺を見下ろしていた。相変わらずその顔は不機嫌そうに顰めっ面だ。
「いい加減、兄弟ごっこは終わりにしろ」
俺は隣でいつの間にか横たわっている弟を横目に見た。
「お前の任務はその子の魂を取るだけだ。余計なことに時間を割くな」
「分かっている。どうせ長くない。焦ることはないだろ」
痩せ細った手足。独特の死の匂い。死神の俺でなくても分かる程の死相が出ている。
「今回で最後だからな」
おっさんが消えた所で、俺は深い溜息を吐く。
弟は相変わらずピクリとも動かない。死へと近づけているはずの親を待ち続けている彼の気持ちが分からない。分からないけれど、両親が恋しい気持ちは嫌でも伝わってくるのだ。何度も絵を見えられて説明されれば、理解させられてしまうものだろう。
「偽の兄だったら、怖くないだろ」
弟の胸に手を当てる。
弱くても感じる鼓動をまだ消し去ることは、簡単に出来そうにない。
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