魔女の惚れ薬

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 昼休み、誰もいない化学室でわたしは、涙で濡れた目元をハンカチで拭っていた。  涙は次々と溢れてくる――と思いきや、ぴたりとすぐにおさまり、目元はあっという間に乾いてしまった。わざと泣いたのだから当然のことだろう、とわたしは全く気にしなかった。  目の前にある机には三角フラスコとスポイト、そしてジュースが一本置いてある。これらは今からはじめる調合に必要なものだった。ただ、器具の使用の許可を取っておらず、その上、勝手に化学室に入っているので、教師に見つかると面倒そうである。  しかし、幸いなことに化学室は薄暗く、おまけにこのあたりは人気も少ないので、様子を見られる可能性はかなり低いだろう。邪魔者がいないことにわたしは心底感謝した。  わたしはハンカチをしまってから三角フラスコを手に取った。その中には透明な液体が少量入っている。窓から差し込む光にフラスコをかざし、十分な量であることがわかると、自然と笑みがこぼれた。  フラスコに入っている透明な液体は、わたしの涙だった。 「これで材料は揃った」とわたしはひとり呟いた。
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