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惚れ薬の材料は簡単、自分の涙さえあればそれだけで揃ったことになる。あとは、その涙を飲ませるための飲み物があれば完璧。
わたしは手に持っているフラスコを傾け、空いている方の手でスポイトを操って涙を吸い取った。次にジュースの蓋を開けてから、スポイトを通してその中身に涙を落とし込んでいく。ジュースの量はあらかじめ調整してあるので、涙を入れたからといって不自然な量にはなっていないはずだ。それに、このジュースは佐藤くんが最も好むものである。抜かりはない。
それから、涙には思いが宿るらしい。相手への思いが強ければ強いほど気持ちが伝わりやすくなり、それ次第では効き目が変わるらしいので、ここは惚れ薬を作る上で一番大切なポイントだ。
佐藤くん、大好き。わたし、あなたの特別になりたい。だって、こんなにもあなたのことが――。
気持ちはすでにたっぷりと込めさせてもらった。ここにも抜かりはない。
わたしはジュースの蓋を閉めた。
これで惚れ薬が完成したことになる。あとは佐藤くんに飲んでもらうだけだ。
わたしは、スカートのポケットから小さな手鏡を取り出して、涙で目元が乱れていないかを確認する。問題はない。
器具を丁寧に片付け、わたしは何事もなかったかのように化学室を立ち去った。
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