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惚れ薬が失敗に終わったのは明白だった。
それでは、ジュースを飲んだ佐藤くんが顔を赤らめたのは、照れなどではなく、わたしの思惑を知って憤ったからなのだろうか。
「君はみんなの注目の的になりたかったんだね」と佐藤くんが言った。「でも、悪いけれど僕は君の思い通りになるつもりはないよ」
「……どうして?」
たっぷり間を置いてから放ったわたしの声は震えている。
「僕には二つ上の姉がいるんだけど、その姉が君と全く同じタイプなんだ。彼女も注目されたくて、人の心を操ろうとしてる。ほんと、くだらないよね。前々から君にはそんな姉と似通っている部分があると感じていたんだ。だから、これまで警戒して過ごしてたんだよ。――惚れ薬には驚かされたけれど」
何それ、とわたしは愕然とした。佐藤くんにははじめから見抜かれていたというの?
「人を支配するなんて行為は最低だと思うよ」
ばっさり切り捨てるように言ったあと、佐藤くんはその場から去っていった。
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