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試行錯誤
この「世界」の敵キャラとも言うべき、誘惑者としての「悪魔」の存在が、「人」を争いへと向かわせるのではないか。そんな事を考えた。男女で争い、親子で諍い、民族同士でぶつかり合って、まぁそれもあって技術力が向上する面もあるけれど、最後はチャンチャン、となる。
「逆に回したりして」
ぼくは試みにいつもとは逆方向に手を動かしてみたけれど、社会の左傾化が加速して共産主義が跋扈し、人々が貧困に喘ぎ始めたので手を止めて元に戻した。急激な民族主義が吹き荒れ始めた。
「なんで領土とかいう観点を持つかなぁ」
腕組みをしていると、ミカエルが帰ってきた。
「おや、ミカエル。お帰りなさい」
「まだやってんですか。もう天界だけでいいじゃないですか。四騎士から苦情が来ていますよ。黙示録の度に出向くのが億劫だと」
屈強なミカエルが腰に手を当てて言い、ぼくは腕組みをして項垂れる。
「でもさぁ、この『世界』の予測のつかなさと『ワンチャンあるかも?』みたいなのが、楽しいんだよね」
ミカエルとガブリエルは顔を見合わせ、肩を竦める。ぼくはひとつ、くしゃみをした。
「おや?」
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