ショートショート あの山へ挑め!

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『大衆食堂 園(えん)』 そこの名物であるチャレンジメニューが「チョモランマ」と「エベレスト」である。 俺は同じ高校の同級生に誘われて、一緒に挑戦することにしたのだ。 「チョモランマ」 総重量2.6㎏のトッピングが積まれたカレーである。 唐揚げ、トンカツ、チキンカツが、カレーライスの上にうず高く積まれている。 唐揚げのジューシーな肉汁。 カツのサクサク感。 単品では絶品の料理の数々も、ここまでの量になれば凶器だ。 だけど俺が敗れた原因はその量ではない。 そう。 辛さだ。 俺は辛いのだけはダメなのだ。 真っ赤な唐揚げは唐辛子パウダーを使っているのだろう。 そして直接の敗因であるカレーは、もの凄く激辛だった。 なんで大食いチャレンジに激辛チャレンジを混ぜるのか?! 納得できない俺をよそに、友人はなんとクリアしていた。 「エベレスト」 総重量3.4㎏のモンスター。 チョモランマのトッピングが増量されて、さらに大盛ナポリタンがプラスされた恐ろしいメニューだ。 彼は成功報酬として代金の5.000円が無料となり、サービスのアイスをニコニコと頬張っている。 俺はギブアップしたので料金3.800円を支払った。 ・・・納得いかん。 アイスを食べ終えた友人と共に店を出ると、彼はこちらを見て言った。 「それじゃあ次はかき氷でも食べようか」 新たな山に挑む、だと?! 俺はあっけに取られて、それから恨めしく睨みを利かせたが、彼は動じることなく笑顔で俺を見つめ続けた。 「はあ。わかったよ」 俺はため息をついて、頷くしかなかった。 そして一言。 「でも、お前のおごりだからな」 俺たちは膨れた腹もそのままに、駅前のかき氷屋へと歩いて行ったのだった。 終わり
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