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寝ている男を起こせば解決することだろう。けど、私はこの男が目覚め私を見る光景が嫌だ。
『いずみ、いいだろう?』
口臭が臭い、加齢臭も臭いまくっている。そんな男が母が二度目に選んだ義父。
『ふざけんな!!』
何度暴れて逃げただろう?頼りの母は恋愛気質な人で、私たちの光景を見た瞬間、青ざめて扉を閉めてこのオンボロアパートから逃げた。
ブブ・・・
スマホのバイブレーションが鳴っても男はまだ夢の中。
【泉、ログインできた?】
逃げた母からのお願いを聞いているのは、この男に暗号資産があると知ったから。
【パスワードで難航中】
暗号資産を手に入れたら、スマホに納めてある証拠を警察に見せる手筈になっている。
【そう。ログインできたら教えて】
近くの駐車場に母が待機している。男との関係を知った母が頼ったのは別の男。
『今度は泉のことも考えてくれる人だから』
実父は事故死して、二番目のこの男は連れ子に手を出す卑劣な人。
「あんた寝てる間に地獄に落ちるよ?」
家族愛なんてない
可愛そうとも思わない
ただこの男が捕まる前に資産を頂くだけ。それだけのことをこの男はしたのだから。
*
一回目のパスワード
0412
パスワードが間違っています
「お母さんを愛してたわけじゃないんだ」
母の誕生日を入れてみた。違うと表示されたとき、なんだかスッキリした気分になった。
この男、愛してなかったよ
お母さんのことも。
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