8人が本棚に入れています
本棚に追加
最後にして
あの男から暗号資産を無事手にできた母は大喜びで、三人目の男が待つ住居に向かっている。
「泉、今までごめんね。これで安心して暮らせるからね」
形だけのごめんねはもう慣れたよ
「ねぇ、最後にしてね」
もう二回も苗字が変わった。高校のクラスメートから冷ややかな視線を向けられていることに母は気づいていない。
「で、あと一回のパスワードはなんだったの?」
「暗号資産を手に入れたんだからいいでしょ!!」
母の言葉に強い言葉で返す私に、母は話していた唇を閉ざす。母娘で空気感が違うのは、されていた行為が違うからだ。
あの男は母には甘く、私には・・
全身がぶるっと震え、思い出したあと一回のパスワード。
野呂と最後に関係を持った日
嬉しそうな母の横顔を横目で見ながら、私は思う。
三人目の義父になる人はまともな人でありますようにと。
おわり
最初のコメントを投稿しよう!