やり直しチケット

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【2回目】  俺が死ぬ半年前、匿名の内部告発による横領の発覚で、経理部長が左遷されて社内で話題になった。  経理課の内さんについて調べると、なんと経理部長の愛人だった。  内さんと時間をかけて親しくなり、不倫の相談を受けるまでになると、奥さんに不倫をバラせば離婚するはずだと、内さんを焚きつけた。  実際、左遷された経理部長は奥さんに捨てられていたので、不倫も発覚すれば別れるだろうと思った。  案の定、経理部長は離婚することになり、内さんは奥さんから慰謝料を請求された。  困った内さんから相談されて、俺は内心ほくそ笑む。 「経理部長がお金の作り方を知ってるよ。それでね、俺からひとつ頼みがあるんだけど……」  内さんと経理部長の横領を、寿樹の仕業として告発させた。もちろん証拠も捏造して。  こうして、経理部長の代わりに寿樹が左遷され、ド田舎の子会社へと出向になった。  田舎が嫌で都会に出てきたと言っていた瑠唯が、寿樹についていくことはない。    そもそも、分岐点の日は前回同様店に行き、その後も前回の記憶を頼りに、寿樹と瑠唯の接触をできるだけ阻止してきたのだ。  今度こそ瑠唯の過ちは正される。寿樹さえいなければ、俺と別れることもないだろう。  だが、数カ月後、瑠唯から別れを切り出される。 「好きな人ができたの。その人も私を愛してくれてる」  相手は知らない男だった。  何故だ……。  そして、その日が来た。  俺は昼食をとりに行った定食屋から職場へ戻る途中、横断歩道の前で信号待ちをしていた。  視界が白く弾け、そして暗転した。 「どっか痛いとこある?」  男の声で目を覚まし、体を起こす。 「背中痛ない?」 「……」 「……なぁ、過ちを正せるんは、自分だけや思わへん?」 「え?」  男は、呆れ顔でこちらを見ている。  過ちを正せるのは自分だけ?  自分の過ちを正すってことか?  俺の過ち? 「そうか! 質問だ! 杉谷範子の勤め先を教えてくれ!」 「……はあ?」  男は、心底意味が分からないという顔をした。  そこまでする必要はないと言いたいのだろう。  でも、念には念をだ。
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