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【3回目】
分岐点の日、俺は範子と連絡先を交換し、店には行かなかった。
瑠唯とはすぐに別れ、あの男から聞いた範子の勤め先へと転職した。
範子とは連絡を取りつつも、転職活動で忙しいという理由で、会わないようにしていた。
そして、転職した職場で偶然再会を果たすと、範子はすぐ俺の虜になった。
まもなく交際を始め、順調に愛を育んだ。
俺の過ちは正された。
瑠唯みたいな浮気女ではなく、範子を選択すべきだったのだ。
これでもう、あの男に会うことも無い。
その日、範子と俺は有休を取ってドライブを楽しんでいた。崖沿いの道を走っていると、バックミラーに映る車がどんどん迫ってきて……。
視界が白く弾け、そして暗転した。
「はい。お疲れさん」
「……何で」
「何で死んだんやろね? よかったら教えよか?」
今度こそ、上手くいったと思ったのに。
これ以上どうしたら!
「なあ……範子ちゃんと付き合ってどうやった? 罪悪感とか覚えへんの?」
聞き捨てならないセリフに、カッとなる。
「罪悪感? 瑠唯にか? 何であんな浮気女に!」
「……あと二回やで? もっとちゃんと考えた方がええよ」
カチンとくる言い方に言い返そうとした時、ふと転職して範子と再会した時のことを思い出した。
『二回も再会できるなんて、運命感じちゃう』
あの時、どういう意味か聞いたのだが、はぐらかされてしまった。
もしかして、範子とは分岐点の日以前に出会っているのか?
「質問だ! 範子が隠している俺との出会いを教えろ」
「……まぁ今までで一番マシな質問やな」
やっぱり!
「せやけど、一言では説明できひんし、範子ちゃんの日記の在り処を教えたるから、自分の目で確認してくれる?」
日記の在り処を告げた後、チケットを破りながら男はこう言った。
「ちゃんと読んで、範子ちゃんの痛みを知るんやで」
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