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それから、自分の車体に少しの傷を認めた小雪は、ようやく顔を相手に向けた。
「僕の車も、そちらの車も、車体の部品が散らばってはいないみたいですね。……ここでは他の車の邪魔になりますし、先の駐車帯に移動しませんか。」
小雪の提案に、男はコクコクと頷いた。
小雪と男は、非常駐車帯まで移動した。男が、「自分が警察に電話する」と言うので、小雪は加入している保険会社に電話をすることにした。
小雪と男がそれぞれ電話をしていると、九十分ほど経って、警察が到着した。
警察は、小雪たちの追突事故が起こる前にすでに存在していた渋滞と、小雪たちが起こした追突事故による渋滞とに巻き込まれて、なかなかたどり着けなかったらしい。
警察はテキパキと事故の処理をして、小雪たちにお互いの連絡先を交換させたあとは、保険会社と相談してくれと言って去っていった。
時刻は午後八時を回っていた。
小雪はずっとこんな、高速道路の中途半端な場所にいるのも癪だったので、「また明日連絡してください」と男に告げてさっさと車に乗り込んだ。
男は、明日連絡しますと叫んで、小雪を見送った。
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