不注意の結末

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Act2. 不注意  時はあれが届いた1時間ほど前。  某国の軍事施設──。  研究室で白衣を着た一組の男女が慌ただしく実験の準備をしている。 「何と言うかさぁ、忙しくて一日何も食べてない時に極上のステーキを一切れだけもらったら、かえって満たされなくなった、そんな気分かな…」 「おかしなこと言ってないで急いでちょうだい。私が入院したせいで実験が1ヶ月遅れているの。あと、入館から入室まで30分の乖離ができたから報告が必要よ」 「入院は仕事で無理をしたからだ。君のせいじゃない。30分の乖離は久しぶりの出社で同僚から引き継ぎを受けていたでいいじゃないか」 「ベッドのある休憩室で? 体調が優れなかったことにするわ。その方が自然よ」 「いいね。それなら早めに終わってまた休憩室を使ってもおかしくない」  女は手を止めて男を睨んだ。 「馬鹿なこと言わないで。私たちは遅れを取り戻さないといけないの! 時間が無いのよ……あなたの気持ちはわかるけど」 「実はね、君が休んでいる間に頑張って、この後に予定された拡張機能の開発を8割方終わらせてあるんだよ。進捗報告はしてないけどね」  男はしたり顔で笑った。 「そうなの!?」 「僕たちはプライベートも監視されているからね。この館内で監視カメラがない所が穴場なんだけど仕事がないと来れない。遅れのキャッチアップならいつも以上に入館できるし、実は仕事が終わっているので時間はある──」 「すてき。ありがとう!」  女が笑顔になった。 「さ、今日の実験を早く終わらせよう」  男はパソコンを操作して、開発中のテレパシー通信装置を起動した。 「今日は、2、3語で形成された単純な概念の送信テストだったね。君に送るよ」 「わかったわ」  女は10メートルほど離れた椅子に腰掛けた。 「じゃあ送るよ」  男は『あと一回だけ』と打ち込むと送信実行した。 「ちょっと、変なもの送らないで……」  女は頬を赤らめると恥ずかしそうに俯いた。 「実験は成功だ! 完璧に送られてるじゃないか」 「…え!? 何であなたがわかるの?」 「そりゃわかるさ。僕の頭にも……そんなはずはない。さっき設定した送信先は君だけだったはずだ……」  男は慌ててパソコンからテレパシーの送信先を確認した。 「しまった! うわぁーーーっ!」  男は頭を抱えて椅子から崩れ落ちた。 「どうしたの? 何があったの?」  女が駆け寄ってきた。 「……昨日、拡張機能の最後、擬似天啓機能の開発を行ったんだ。その時、全人類向け送信グループを作って設定して、それを消さずに残したままだった……」 「そ、それって今の内容が……」 「そうだ。恥ずかしいおねだりが世界中に送られてしまったんだ」
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