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Act4. 天啓②
翌日の夜。研究室。
他の研究員が帰ると二人は顔を見合わせた。
「だめ。ひと晩中考えたけど思いつかなかった。そもそも良いことは続けて欲しいし、悪いことはあと一回じゃなくて、一回もやってはいけないのよ」
「僕もそう思った。それで、やってもやらなくてもどちらでもよいことを考えてみた。それならあと一回でやらなくなっても大丈夫だろうと」
「で、どうだった?」
「やっぱりだめだった。世界にはいろんな人がいる。全ての人に問題がないなんて言いきれない」
「そうよね……実は私の結論は、具体的に行為を指定しない、つまりこのまま成り行きを見守るなの。ごめんなさい」
「……そうだね。同感だよ。具体的に行為を指定しないことには。でも、もう一回世界に向けて送信はしたい」
「どうゆうこと?」
「具体的に何の行動についてかは、みんなが自分で決めてくれればいい。僕たちは、あと一回だけというのを変えればいいのさ」
「それはそうだけど──まだ2、3語で形成された単純な概念しか送れないのよ。前回は間違ってました、ごめんなさいとは言えないし」
「その通り。前回に上乗せする形で、これならどうだい?」
男は自分のパソコンのモニターを指さした。
女が男の席に移動してモニターをのぞき込む。
「……そうね。うまくいくかもしれない。やってみましょう」
「ありがとう。じゃ、送るよ」
それは、何の前触れもなく、再び世界中の人々の頭の中に現れた。
《一日一回だけ》
(完)
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