戦いごっこ

1/1
前へ
/12ページ
次へ

戦いごっこ

「エイヤー!」 ラリエルは得意の上級炎魔法をくりだす。 「うわー、やられたぁ。さすが、ラリエル」 倒れる魔王。反逆ではない。遊んでいるのだ。  熱が下がったラリエルだが、外で遊ぶわけにもいかず、メイドに任せるわけにもいかないので、魔王と城の中で戦いごっこをしているのだ。  もちろん、史上最強唯我独尊俺様男の魔王が、息子相手といえど簡単に負けてあげるわけではない。 「ふはは、そんな攻撃効かぬわ!」 演技もへったくれもなく、対応していた魔王。 「やぁー!」 だが、それがラリエルには面白く、攻撃は永遠と続いた。そして、永遠と続くと魔王は飽きる。そして、それ以外に何もできない。少しメールをチェックしようとしても 「魔王?」 きらきらした目で問いかけてくるラリエルがいる。 水を飲むのもトイレに行くのも全てラリエルが許さない。結果、倒れたふりが一番楽なことに気づいたのだ。 魔王、ラリエルの中で好感度爆上がり中。 「魔王、あちゅい?」 キラキラおめめでラリエルは仰向きで倒れている魔王に馬乗りになる。この世で魔王に馬乗りになった人物はこの銀河の中でラリエルただ一人である。そのラリエルは魔王にとどめをさすのではなく、心配しているようだ。小さな手で魔王の頬をはさみ、おでことおでこを近づける。これはおそらくおでこ同士で熱をはかるのだ。ユリアにやってもらったことがあるのだろう。あどけないラリエルの顔が近づいてくる。魔王の顔がほころんだ。 「変な顔―!」 ラリエルは魔王の頬を引っ張って、強制にらめっこを発動した。もちろん史上最強の魔王にそんなことできるのはラリエルただ一人である。   冒険者A「ここの敵さ、さっきから同じ攻撃で強いわけじゃなさそうなんだよな」 冒険者B「あぁ、特に致命傷には至らないし、回復魔法で回復もできる」 冒険者A,B「ただなぁ」 冒険者A「飽きるんだよな。同じことばっかの繰り返しで。エンドレス。つまんない」 冒険者B「もう帰ろうぜ。もっと派手な戦いで手柄たてようぜ」 この作戦はラリエル作戦と名付けられ、結構うまくいった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加