きみの名は

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きみの名は

「ペットにもふもふドラゴンとはさすが魔王様でございます。もふもふドラゴンは空飛ぶペンギンと言われるくらい恐れられているゆえ」 おべっかを使うゴブリン。ペンギンといえば、短い足にぽってりおなか。ドラゴンも確かに足は短くおなかはぽってりしているが。魔王は空飛ぶペンギンを想像してみたが可愛い姿しか思い浮かばなかった。平民の感覚では恐ろしいと感じるのか、ゴブリンが適当言っているのか。魔王は後者と判断した。魔王が関節をならす。さて、どうしようかと思案したが、ペンギンの姿が脳裏から離れない。ゴブリンは焼き討ちを免れた。 「このもふもふドラゴンとは幼いころシュリアと一緒に遊んでいたのだ。だから懐くことがめったにないドラゴンもこの通り、懐き、跪き、俺様にひれ伏しているのだ」 ひれ伏しているかはさておき。魔王にあごを撫でられ、気持ちよさそうに目を細めるもふもふドラゴン。幼い時、人間に虐めれら、シュリアはよく泣いていた。人間を追い払うのは簡単であったが、シュリアを笑顔にするため、もふもふドラゴンに乗り、一緒に空のドライブをしたのだ。 「そんな思いでの品でしたとは」 「品?」 大切な家族を「品」扱いとは。ペンギン効果は消滅した。魔王は人差し指に炎をともした。慌てるゴブリン。 「いえ、言葉のあやでして。でも、それでしたらシュリア様が戻ってこられたらシュリア様も喜びになるでしょう。さすが、魔王様」 「やはり喜ぶと思うか?」 実はそれも少し期待していた。ゴブリンも喜ぶと思うなら少し安心だ。魔王は炎を消した。 「あ、戻ってこられたらですが」 やはり一言多いゴブリン。魔王の右手が炎に包まれている。ゴブリン、まつ毛が2本燃える。 「もふもふ~」 ラリエルはもふもふドラゴンの背中に乗り顔をうずめる。もふもふドラゴンはわたあめのようにもふもふの毛に覆われている。通常なら近づくだけで威嚇の炎を放つもふもふドラゴンが目を細め、2歳の男の子にぎゅーされるているこの光景。癒しの波状攻撃である。魔王は心の豊かさを手に入れた。ゴブリンのまつ毛が2倍になった。 「ところで魔王様、ペットにするなら名前がいるのでは?」 ゴブリンはあわよくば自分が名付け親になり、他の家臣にマウントをとろうと考えていた。 「名前なら、幼き頃シュリアと一緒につけたのだ」 ゴブリン計画、2秒でとん挫する。 「仲睦ましかったのですね」 ゴブリン、致命的ミスをおかす。 「今もだ」 魔王の右手が燃える。ゴブリン、10円ハゲができる。 「シュリア様とつけたのなら、ハイセンスでおしゃれな名前なんでしょうね」 ゴブリン、雨上がりの雑草のように髪がのびる。 「当たりまえだ。なんだと思う。当ててみよ。当てたら褒美に貴様の似顔絵を描いてやろう」 上機嫌の魔王。似顔絵はいらん。だが、お気に入りナンバーワンということでマウントはとれるだろう。 「もふもふドラゴンは驚異的な攻撃力だけでなく、知能もずば抜けているときいております。昔の偉人にちなんでゴブリンティヌスと名付けたのではないでしょうか」 魔王の人差し指に炎がともる。 「俺様とシュリアがそんなダサい名前をつけるとでも?」 「ひ、すみませんでした。それではかの大王にちなんでゴブリサンドロス大王」 魔王の中指にも炎が灯る。 「ふざけているのか?」 「いえ、めっそうもございません。でも、最強の魔王様とシュリア様のお考えが私のようなパンピーのゴブリンにわかるはずはございません」 魔王は納得する。魔王の炎は全て消える。ゴブリンの命が救われる。 「確かにその通りだ。では名前を教えよう。もふもふドラゴンのその見た目からつけた、ハイセンスな名前を」 ゴブリンは唾をのむ。そして、頭の中でリアクションを考える。驚き、たたえ、称賛する最上級のリアクションを。 「名前は『うなじぃ』だ」 ゴブリンは新喜劇なみにコケる。見事にこける。ゴブリン人生最大のこけっぷり。 「うなじぃですか!?なぜまた。いえ、魔王様とシュリア様しか思い浮かびません」 嘘ではない。本心である。 「そうだろう。このドラゴンの見た目、うなぎに似てるであろう。細長い胴体。短い手足。それにドラゴンは千歳も生きておるから、そでにこいつはじじぃなのだ。だからうなじぃ。」 どや顔の魔王。 うなじぃって。うなじぃって。心の中で叫ぶゴブリン。その夜SNSでつぶやいた。民衆の魔王への親近感が10あがった。
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