6人が本棚に入れています
本棚に追加
うなじぃ
『シュリアちゃんがいないのぉ』
呼び出されたうなじぃはシュリアの不在を瞬時に理解。そこにいるのは魔王とシュリアの匂いが残る小さな子ども。
「ふむ」
うなじぃは鼻をならす。
『この子は魔王とシュリアちゃんの子ども。そして、魔王がシュリアちゃんをいじめて、シュリアちゃんが実家に帰った。子どもの面倒をみることになった魔王だが、時間を持て余し、わしを召喚したというところか』
うなじぃは意外と賢かった。
『まずはシュリアちゃんをいじめる魔王を懲らしめるとするかのぉ』
うなじぃは100%シュリア派であった。
「久しぶりだな」
魔王はうなじぃのあごの下をなでる。シュリアちゃんより力が強い分、かゆいところにちょうどよい。いや、はっきり言って気持ちいい。シュリアちゃんは何もわからずたまに触ってほしくないところもなでてしまうのだが、魔王は急所も気持ちがいいところもピンポイントでせめてくるのじゃ。でも懲らしめないといけないのだ。優しいシュリアちゃんをいじめる魔王を。懲らしめないと、懲らしめ、懲ら。
「にゃー」
うなじぃは魔王におなかを見せた。
うなじぃは魔王の育児に協力することにした。子どもはラリエルというらしい。シュリアちゃんの子どもとあって、愛らしい顔をしているではないか。
「もふもふー」
ラリエルはうなじぃに顔をうずめる。ほら、なんともいえず愛らしい。さすがシュリアちゃんの息子。
「にゃふ!?」
ラリエルが顔をうずめ、天使の表情で噛みついてきた。もふもふドラゴンのもふもふの下の皮膚は鋼鉄のように硬い。だからといって痛みがないわけではない。
『なるほど、魔王の血が混ざっているだけのことはあるわい』
ラリエルに邪気はない。シュリアちゃんのような無邪気な微笑みで、一切の躊躇もなく、魔王のふるまいをする。
『逃げ出すか。魔王の息子、手には負えん。いや、だがこの子はシュリアちゃんの愛息。見捨てるわけには』
いかんのじゃと誓った30秒後。
「にゃふー!!」
うなじぃは白旗をあげた。
『シュリアちゃん早く帰ってきてー!』
ばか息子がうなじぃの背中にまたがっている。はたから見ると癒しの光景であろう。だが、気づけば毛をむしりとっておる。腰の上でジャンプしよるのだ。魔王の悪事は確信犯。でもラリエルに悪意はない。無邪気で天然なシュリアちゃんと最強魔王。混ぜるな危険なのじゃ。
「ラリエル、飯だ」
うなじぃは解放された。そして、愛しのシュリアちゃんを探しにいくことにした。
最初のコメントを投稿しよう!