お出かけ

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お出かけ

「ひこうき!ひこうき!」 すっかり回復したラリエル。今日は若いもふもふドラゴンに乗り、空の散歩である。 「どうだ、気持ちがいいか、ラリエル」 魔族の集落も人間の町もおもちゃのように小さい。風を浴び、雲をつかむ。ぽかぽかの太陽のブランケット。髪をなびかせるラリエルの横顔はもう赤ちゃんではない。りりしくなった眉はやはり俺様の子どもだ。 「ゴミ?」 眼下の集落を見下ろすラリエル。もちろん邪念のないあどけないきらきらとした瞳である。 「俺・・様・・・の・・・・子か」 認めざるを得ない。これからは言葉を慎もうと誓う魔王であった。  何はともあれ魔王一行は霧深く人々に忘れ去られた名もなき森に到着する。 「幼き頃、よくシュリアと遊んだ森なのだ」 人間にいじめられ泣いているシュリアをもふもふドラゴンに乗せて、よくここに遊びにきたのだ。まぁよくよく想い出せばシュリアの生意気な弟も一緒だったのだが、あいつはおまけなので二人の思い出といってよい。 少し小高い丘のふもとに着陸したもふもふドラゴンは、そこで一休みをする。初めての場所に多少緊張した面持ちのラリエルを肩車し、散策を始めた。 「このあたりに、シュリアと秘密基地を作ったのだが、残っているだろうか」 倒れた木や枝を使って二人で小さな家を作ったのだ。最も家と呼ぶにはあまりにも粗末で、すきま風どころではないし、雨がふれば即泥だらけ、座れたものではなかったが、二人で縮こまってそこに入り、シュリアの好きなおままごとをしていたのだ。 「くそ、さすがにもうないか。歳月が憎らしい」  魔王、歳月を敵にまわす。
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