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秘密基地
「きちきち!」
緊張がとけたラリエルは秘密基地というまだ絶対何かわかっていないのに全世界全種族の少年が魅惑を感じてやまないその言葉に目を輝かせている。
「そうだ、俺様と二人で秘密基地を作るぞ。そうだな、今ならママと家臣も入れるとびっきり大きな秘密基地を作ろう」
無力で無知なあの頃とは違う。魔王は風魔法でその辺り一帯を更地とし、図面を書き始めた。
「ここがリビング。みんなが過ごす場所だ。ここがキッチン。寝室は広くして、ラリエルの部屋はここがいいか?」
「あーあーも!」
ラリエルが何か言いながら地面をさしている。
「こっちもお前の部屋がいいのか?欲張りだな」
「らー!あーちゃんも!」
ラリエルが地団太をふんでいる。シュリアならわかるのであろうが、まださっぱり理解できなかった。あーちゃんなんてうちにはいないのだ。ま、解せぬことに時間を費やしても仕方がない。さっそく枝を厚めに行くことにした。
「らー!」
ラリエルが樹齢一万年の大木を折ろうとしている。
「こら!ラリエル!その木を折るでない。その木はまだくたばっていないのだ」
「くらば?」
ラリエルが首をかしげる。しまった。言葉を慎むと決めたのだ。
「その木はくそじじぃのように長生きしていて、まだ死んでないから折ってはだめだ」
「くそじ?」
「いや、じじぃだ。いや、じいさん。お年寄りだ!」
「おとり?」
「要はずっと昔からその木は生きていて、今も生きておる。だから折ってはいけない。下に落ちている枝を集めるのだ。折るとしたら、密集しすぎて陽の光を遮ってしまっている木を選ぶのだ。間伐というのだ、覚えておけ」
魔王、森の手入れもぬかりなし。
こうして魔王とラリエルは枝を集め、組み立て始めた。こういう時に魔法を使うのは無粋である。ツタを紐替わりにし、せっせと汗を流して組み立てる。途中、ラリエルもやろうとするが当然うまくできず、べそをかく。
「ほれみろ、二歳のお前に俺様のようにできると思ったのか」
魔王、大人げなし。だが、泣きながらも頑張ろうとするラリエル。頑張って、失敗して、また、頑張って、失敗する。
「ほれ、支えてやる。この紐をくるっとできるか?」
頑張るラリエルになぜか心が温かくなる魔王。
「こう?」
こうして、親子力を合わせ秘密基地作りをしていくのだった。
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