秘密基地

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「かんせーい!!」 空がオレンジ色に染まる頃、すきまだらけの、小さな小さな秘密基地が完成した。 「ラリエル!中に入るぞ!」 中に入って地べたに座る。ラリエルの鼻の頭にはいつの間にか泥がついていた。もちろん魔王の鼻にも。お互い顔を見合わせて声をあげて笑った。 「おそら、きれいねー」 ひとしきり笑ったあと、ラリエルは空を見あげた。 「あぁ、家の中なのに空が見えるな」 もっとうまく作れると思った。もっと広く、もっと快適で完璧な家を。だが、実際できたのは子どもの頃に作った秘密基地となんら変わらない。隙間だらけで泥だらけで、家の中なのに空が見える、小さな小さなおうちだった。 「ラリエル、ごめんな」 魔王は人生で初めて謝った。だが、そんな事はどうでもよかった。シュリアとままごとで遊んだ時のことを思い出した。実際の父親よりも、あの時のパパ役の方がよっぽど上手だった。あの頃よりも強くなり、賢くなり、権力も富も名声も得たはずなのに、ボロボロの家しか作ることができず、妻は出ていき、子どもは寂しい思いをしているのだ。 「魔王好き。ママ好き。すき、すき。」 わからないと思っていたラリエルの言葉が、はっきりと理解できた。きっと落ち込んでいる俺様のためにはっきりとしゃべったのだろう。なんと優しい子どもなのだ。 「そうだ、今度はシュリアとも一緒に来よう。お弁当と座布団も持ってきて、世界一快適な家にするぞ!」 「らー!」 元気を取り戻した魔王。今回の秘密基地は誰にも壊されないように、魔王は森全体に結界を張った。おかげで樹齢1万年の大木も保護され、珍しい生態系は今後の戦火にも開発という名の自然破壊にも飲み込まれることなく、維持されることとなった。世界発の自然遺産である。  魔王、歳月に勝利した。
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