オムツ替え

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オムツ替え

 「魔王様、会議中申し訳ございません。坊ちゃんがおむつを替えさせてくれないんです」 新しい勇者の情報共有をしている最中、ゴブリンが申し訳なさそうにやってきた。 「そんな事いちいち俺様に報告するな。お前たちで解決しろ」 普通の人間ならにらまれただけで失神する、大きく鋭い目でゴブリンを追い返す。 「坊ちゃんがすでに西の棟2棟壊してしまいましたので」 2歳といえども、最強魔王の子どもである。 「・・・すぐ戻る」 代々受け継がれている漆黒のマントを翻し、冷たい風を感じた頃にはふっと魔王は消えていった。 「ラリエル、パンツかえかえしよっか」 魔王はラリエルのオムツ替えに奮闘していた。 「いやー!」 会議前は綺麗に片付いていた部屋が、今は部屋ごと、いや棟ごとない。 「こっちのパンツかこっちのパンツどこがいい?」 可能なかぎり優しい声をだしている。『おとなしくしやがれ、くそ息子!』と怒鳴ったところ、さらに1棟破壊したためである。恫喝は2歳児には通用しないことがわかった。 「魔王をなめるな。拘束魔法を使ってやる」 泣き叫ぶラリエルはピーンとかたまった。 「ふふふ、うん?」 これでおむつを替えることができる。だが、お尻が拭けないのである。 「いやー!」 泣きながら、上級炎系魔法を繰り出すラリエル。もちろん食らったところで魔王にはダメージがないのであるが、地味に鬱陶しい。 「んじゃぁ、こっちのパンツにラリエルの好きなピカットザウルスの絵をかいてあげよう」 魔王は考えたのだ。拘束魔法も使わず、攻撃もせず、こちらの意のままに操る方法を。選びたくなる工夫をすればよいのだ。 「らーちゃんこっちにする」 オムツ替え完了である。 「まったく、手こずらせおって」 水魔法で手を洗い、風魔法で手を乾かした魔王。最強魔王の芸術ポイントと賢さが1上がった。 「似合う?これ似合う?」 きらきら目を輝かせてオムツを履いたお尻を見せてくるラリエル。苦労したあとのこの笑顔は魔王といえどキュン死寸前である。 「さっきの泣き真似はどこにいった。まったく反則だな。」 だが、今度はズボンをはかせることに苦労することは言うまでもない。 冒険者A「このダンジョンもしかして文化的価値があるのか?王族所有の物件か?」 冒険者B「この壁画とかすごいよな。これ絶対壊したらダメなやつだよな」 冒険者A「俺たち間違えて世界遺産に入ってしまったのかも。立ち入り禁止の看板立てといてやろうぜ」 ちなみに絵画にはまった魔王とラリエルは至るところに絵をかき、それは砦やダンジョンにまで及んだ。その絵を見た冒険者はあまりのすばらしさに攻略することをあきらめ、魔王の領土は戦わずして守られることとなった。
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