寝かしつけ

1/1
前へ
/13ページ
次へ

寝かしつけ

 子どもというのは勝手に寝るものだと思っていた。ラリエルは寝ない。ラリエルを寝かしつけたら、酒を飲もう、家臣のドラドラキュラとオンライン飲み会をしようと思っていたのに全く寝ない。 「睡眠魔法。は、さすがにだめか」 ネットで育児について調べたら魔法を使った育児は軒並み炎上していた。炎上など怖くはないが、シュリアが帰ってきた時に魔法で育児をしたこをばれたくなかった。  それにしても、ラリエルの目は丸くキラキラ輝いている。その目は幼き日のシュリアにそっくりで超絶可愛いのだが、魔王だって一日の最後くらい自分の時間がほしい。 「そうだ、子守歌だ」 遠い記憶をたどり、魔王は歌い始める。最初は小さく。寝るためだから、小さくゆっくりがいいのだろう。 「上手上手」 なぜかラリエルが頭をなでてくる。違う、褒めてほしいのではなく、寝てほしいのだ。その思いから徐々に歌声は大きくなる。部屋全体、棟全体、城全体に森全体に響き渡るようになり。  最強魔王、肺活量が1上がる。 その頃、魔王城にほど近いヘンキョウ村。 見守りA「やばい、当直なのに寝てしまっただ」 見守りB「大丈夫だで。最近魔物や魔人はおろか、畑を荒らすタンタンタヌキもアライーグマ静かなんだ。みんな寝てるって噂だで。」 見守りC「そういえば、夜中徘徊するボーケンじいさんも徘徊しなくなったらしいでだ。孫のイーエンちゃんが喜んでたよ」 見守りB「そういえば酒飲んで喧嘩するやつもいないでな」 見守りA「平和だな」 見守りC「だな」 魔王の子守歌は平和に少しだけ貢献していた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加