洗礼

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洗礼

 さて、いよいよ今日にでも勇者が砦に到着するであろう朝。魔王はメイドにラリエルを預けることにした。 「ちょっと行ってくるだけだからな」 泣きじゃくるかと思えば、ぼんやりしている。この数日で距離が縮まったかと思ったがまだ、そんなものか。魔王は残念に思いながら、ラリエルに別れのチュウをした。 「熱い!」  ラリエルのほっぺが熱い。もちろん溶けるほどではない。だが普通の魔族なら火傷するであろう。もしかしたらと思い体温計をもってくると 「380℃あるではないか!」  どうして今日なんだ。昨日まではピンピンしていたではないか。会議なら欠席できる。でも今日だけは俺様が行かねば。今日だけは。なぜ今日なのだ。  瞬間移動だから一瞬くらい抜けてもいいか。魔法を唱えようとしたその時、魔王のエプロンの裾を力なく、ラリエルが引っ張った。とろんとした目は何かを訴えている。 「い、いけない。こいつを残して仕事になどいけない」 魔王は考えた。「すみません。息子の発熱のため、今日の勇者への挨拶お休みします。」このセリフを言えばいいのか。このセリフを言えば、今日一日ラリエルと一緒にいれる。 受話器を持つ手がプルプル震え、結局受話器は砕け散った。 「最近たるんでいるな。たまにはお前が勇者と戦って、たるんだ体を精神を鍛えてこい!」 「ば、ば、ばれてたんですね!」 モモンガミサンガは真っ青になった。 「砦は最悪落とされてもよい。生きて帰ってこい」 実をいうと、砦は幼きユリアと遊んで思い出の場所。奪われたくはない。だが、その場所で部下が死ぬのはまっぴらごめんだ。 「ま、ま、魔王様~!」 モモンガミサンガの忠誠心が10上がる。 ちなみに勇者は最速3分で砦を攻略することとなる。モモンガミサイルは辛くも魔王城に帰還。モモンガミサンガの経験値が21あがった。
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