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――ボタンを押すと願いが叶います。
一ヶ月前に突然届いた郵便物に入っていた機械。ボタンがひとつ付いたそれに同封されていた紙には、そのように記載されていた。
胡散臭い。いくら欲深い私にもそのくらいの分別はある。雑然と置かれている洋服やコスメを部屋の隅に避けながら、脳裏に浮かんできたのはクラスで一番人気の寛人だった。
――寛人と付き合えますように
頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ堪能、という少女漫画から飛び出してきたような男子生徒だった。それでいて性格良しと評判なのだから、人気者なのもうなずける。
寛人の彼女という立場になれば、見える世界が変わるのだろうか。教室という狭い世界には見えない階層が存在している。例えば制服の着崩し方、例えばトークセンス、例えば付き合う相手によって、立ち位置は簡単に変わってしまう。
ボタンについての説明は、もう一つあった。
――ただし、効果は三回までです。
ボタンの効果が本物なら、願いが叶うのはあと二回だ。
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