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憑依 壱
痛みで目覚めた。
新原愛人が目を開けた先にいたのは、一人の女性だった。腕を組み、無表情で愛人のことを見ている。
金色のショートカット。細い眉。同じように細い目。氷を入れているかのような冷たい目。赤い唇。
平安時代の貴族が着用するような上着は、派手なピンク色をしている。
首に大きな数珠をぶら下げている。
手足が言うことを聞かない。首を動かす。痛い。骨が割れるよう。
両手は万歳をするような恰好になっていて、天井から伸びた鎖に繋がれている。両足も同じように床から伸びた鎖で繋がれている。
つまり愛人は全く身動きが取れない状態だった。そこで気付く。自分は裸だ。かろうじてパンツは履いているが。
そう実感した途端、寒さが全身を舐める。見える範囲で言えば、体中に傷がある。ムチかナイフで何度も何か所も痛め付けられたかのような。すでに血は乾いているようで、赤い線が無数に見えた。
部屋の中は六畳ほどの狭い場所。床も天井も壁もコンクリート。女性の背後に裸電球がぶら下がっている。そのまた奥に鉄の扉が見えた。目がかすんだ。
「ようやく起きたんだ」
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