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「まだあきらめてないからな」
宇崎がそう言って缶ビールを一気に飲んだ。
愛人達から二つ離れた車両だった。
「けど、今回の映像は残ってないですよ」
阿久根がそう返す。彼の顔は猫にでも引っ掻かれたみたいに傷だらけだった。実際は隣の宇崎に攻撃されたのだが。
「まだ私にはチャンスが残されている」
まさか、と阿久根。「近影町で撮った映像を使う気ですか?」
愛人達が初めて口裂け女と遭遇した場所だ。宇崎達と初めて出会った場所とも言える。
いやいや、と宇崎は首を振る。「あんなものは使えないよ」
「えっ? お蔵入りするんですか?」
「もったいないが、そうするしかない。あれだけCGだと言われた後に、同じような映像を出しても反応は薄いだろう」
じゃあ、と阿久根は首を傾げる。「チャンスっていうのは?」
これだよ、と言って宇崎がハサミを取り出した。
げっ、と阿久根は思わず声を上げる。前の座席にいた志藤も振り返り、同じように声を上げる。
「う、宇崎さん、それって、く、口裂け女の!?」
ニヤリと笑い、シャキン、とハサミを開閉する宇崎。
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