1,カナダの小悪魔

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1,カナダの小悪魔

 私も、昔はやんちゃしておりました。  昔といっても、二十年くらい前の話です。      そりゃあもう、毎日毎日、学校の先生や周りの人らを巻き込んで…。    当時はそれが誇りに思っていましたが、今となると、彼らと面と向かって土下座謝罪したいくらいです。    今、自分が進む道に困り果てている若者も、きっと大丈夫。私を見てみてください。      二十年前、学校の廊下に狂犬を放したのも、街中に赤色スプレー缶で自分のイニシャルを書いて回ったのも、私です。  正確には、〝私たち〟ですが。      こんなどうしようもない悪ガキでも、自分でいうのもおかしな話ですが、ある程度立派な大人になれたつもりでいます。  人生はとっても短く、気づいたらあっという間に終わっている、ひとつの物語のようなものです。  逆に人はこの世に生まれた瞬間から、人生という名の無期懲役、と言い換えることも可能です。  自分の人生、何を望み、どんなふうに行動し、どのように自分の物語を華やかに彩らせるかは、すべて自分次第なのです。  あくまで、前記のことは、約三十年間私が息をしてきた中で至った考えです。  …おっと、私は何を語っているんでしょうか。まだまだ自分も、人生経験が浅いというのに…。  私はあまり記憶力がいいほうではありません。自分が覚えている中の、自分の物語の最初の一ページ目は、恐らく、二人の仲間とともに自転車に乗り、今は懐かしいカナダのある通りを疾走しているところからはじまります。
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