1,カナダの小悪魔

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 自転車に乗った〝ヤツら〟だ。一番前を少年がハンドルから手を離して花火をまき散らし疾走、二番目を少年と少女が二人乗りしながら…クィーン・ストリートの方からやってきた!!  それを一番初めに発見したのは、エルムとクィーンのクロス地点から少し北に行ったあたり(エルム)に住むリチャード・スミス氏。配達業者であり、白ひげをボウボウに生やした彼は、〝ヤツら〟から「サンタクロース」というあだ名でコケにされていた。  最近、すぐにカッときてしまうようになったスミス氏は、どうにかして〝ヤツら〟を捕まえたくてしょうがなかった。  自身の庭のトマト畑にネズミ捕りを仕掛けたことが一度あったが、ご察しの通り、上手くいくはずもなく、ナンシー・スミス夫人には呆れられていた(スミス夫人はなぜか〝ヤツら〟に興味を示すことがなかった)。  大人しくティータイムに入ったスミス夫人に冷ややかな目で見守られる中、スミス氏はすぐに畑用のスコップを持ち、近所さんたちに連絡を入れた。  その瞬間、エルムに飛行機でも落ちてきたかのような騒ぎになった。皆家から飛び出し、今日こそ退治してやろうと顔をそれこそトマトみたいに真っ赤にさせていた。  まさかエルム全体から集中攻撃を受けるとは思っていなかった〝彼ら〟は、花火を手放すことなく、走りながらそのままこの状況をどう回避するかの会議を始めた。  
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