2,〝ヤツら〟の集い

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2,〝ヤツら〟の集い

 三人はそのままエルム人たちの敷地内を西へ走り、エルム・ストリートより西に平行に並ぶパイン・ストリートへ出た。もう全力を出す必要はあるまいと、三人は残りの仲間のいるところへ向かっていた。  ブロンドのラニー・クランストンは、ちまたでかなり有名だった。絵に書いたような問題児で、その勢いは限度を知らず、学校の先生からはもうほぼ止めるのを諦められていた。  彼の問題を起こしたいという衝動は、いつなんどき起こるかわからない。前に、彼のお姉ちゃんの頭の痛くなる匂いの香水を勝手に持ち出し、学校中にばらまいたこともあった。  そんな彼のペースについていける人物は、この世界中にたった一人だけだ。  ジェレミー・リンドバーグ。二人はお互いに「相棒」という認識だ。彼と比べてしまうと謙虚に見えてしまうが、ジェレミー単体でも野放しにすると、街中が大変なことになるのだ。  建物の壁にスプレー缶の落書きの嵐。最近の彼のお気に入りは赤色と「Jeremy」の「J」の組み合わせ。そしてもう一つの持ちイタズラは、学校中の生徒のロッカーの中に空っぽのポテトチップス袋を放置することだ(前記に比べてかなり地味だが生徒たちにとっていい迷惑なのだ)。そしてなぜか、みんなのロッカーのパスワードを知っていたのだ。  悪魔のようなガキんちょを二匹も同じ建物内(学校)に長時間とどめておくのは先生側の自殺行為に値するが、残念ながら悪魔は二人だけではなかった…。 「くっそー、もっとやりたいことあったのになあ」ラニーが嘆いた。 「「やりたいことって?」」ジェレミーとギャビーの言葉がピッタリ被さった。  すると、ラニーは速度を落としてジェレミーの自転車の隣に並んで言った。 「そりゃあ、缶スプレーで落書きとか、畑の芽をぜんぶ引っこ抜いて回るとか…」  ラニーは指を一本一本折りながら彼なりのやりたかったことを挙げていった。 「サンタクロースの仕業でしょ」ギャビーが電話のジェスチャーをしながら言った。    
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