本編

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ずっと友達だったから それまで自宅への行き来はあったが、 仕事のパートナー、そして佐橋という 恋人ができてからは特に足を運ぶことは なかった彼の自宅に足早に向かっていた。 『佐橋がいなくなった』 同棲していたはずの恋人が失踪したと 彼から打ち明けられた瞬間は すぐに受け入れることはできず、 反射的に川瀬落ち着けよ、人はそんなに 簡単にいなくならないよと笑ってしまったが 事実は予想を遥かに超えて深刻だった。 彼と付き合い始めてから頻繁に外泊する 佐橋に不信感を抱いていた彼は、 数日前、とうとう佐橋に問い詰めた。 地元に置いてきた妻がいる。 佐橋の口からそれを聞いた彼は崩れ落ち、 出ていけと泣き叫んだ。 そして何故俺に会いに来たと訊いたという。 佐橋は親の会社の借金のために 妻と愛のない結婚をしたが、 高校時代に好きだった彼が諦めきれず 半年の期間限定で上京してきたと答えた。
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