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「お疲れ、岸野」
「お疲れ様、また明日」
戸締りをし、店の前で別れる。
僕を振り返ることなく恋人が待つ自宅へ
帰って行く彼の背中を見送ってから
スマホを取り出し、宮嶋に連絡する。
このルーティンはもう2ヶ月を数えて、
少しずつ彼への気持ちを手放していると
いう自覚が進んでいた。
その夜も変わらず、彼と別れるとすぐ
宮嶋に連絡を入れた。
『こんばんは。今、仕事が終わりました。
宮嶋さんは終わりましたか』
送信して秒で既読になり、返信があった。
『うん。今、自宅。岸野くんお疲れ様』
人の邪魔にならないように配慮しつつ、
歩きながら宮嶋とやり取りを始めるのも
変わらない。
穏やかな時間、まさかこんな展開が
訪れるとはといつも思う。
彼に出会ってから
彼以外の人を意識したのは宮嶋しかいない。
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