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「ありがとうございます」
ドアにつけられた小さなベルがちりんと鳴り、
最後のお客様が退店したそのタイミングで
キッチンから川瀬由貴が顔を出した。
「岸野、お疲れ」
「川瀬もお疲れ様」
彼と微笑み合ってから、
僕は傍らに置いていた濡れ布巾を手にして
テーブルの片づけを始める。
各駅停車しか停まらない某駅から徒歩圏内。
住宅街の一角にイタリアンレストランを
構えたのは、1年前の今日だった。
高校卒業後に選んだ料理の専門学校で
知り合った僕たちは、
複数のレストランでの修行を経て
念願の独立を果たした。
付き合いは、既に8年になる。
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