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悲鳴3
一発の銃声のあと、デルフィヌスは、崩れ落ちた女の口から拳銃を抜き、直ぐに背を向けて、何処かへ歩き去った。
ゲンマは腹を抱えて笑った。腹筋が痛い。
デルフィヌスという人は、かつて何処かのお嬢様だったと、噂で聞いた。それが、小学生の時、お遊戯会か何かで人魚姫の王子の役に選ばれた。姫の役は選考会が紛糾し、デルフィヌスに意見を求められた。そして、デルフィヌスが選ばなかった方の女子は、そもそも立候補できる容姿ではないとか、出しゃばっていたとか騒がれ、自ら命を絶ったとか。
ゲンマからすれば、学校なんて行かなきゃ良いと思うが、どうやら、デルフィヌスはそうではなかったらしい。其処から一言も言葉を発さず、ボディランゲージすら示さず、あれよあれよと犯罪に手を染め、今の仕事に就いたようだ。
物事を決定してしまえば、意見を発すれば、失敗すればその人のせいで、成功したら妬まれる。ゲンマからすれば当然だが、デルフィヌスは、その簡単な事実に、その事件で漸く気づき、ショックでも受けたのだろう。
人の人生は簡単なことで狂う。きっと、あり得ない設定が次々に起こる映画と、そう変わらないのだろう。バカバカしくて笑ってしまう。本当に。
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