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悲鳴1
ゲンマは真っ暗な部屋の中で、静かにスナック菓子を食べていた。袋を開ける音が静寂を破り、カサカサとしたビニールの感触が手に伝わる。手探りで取り出したスナックを口に運ぶと、チーズの香りが鼻をくすぐり、サクサクとした食感が心地よい。六台のパソコンの全ては電源が落ちており、彼の目はスマートフォンの画面に釘付けで、薄暗い光が彼の顔を照らしている。時折、袋の中を探る手が空を切ると、彼は少しだけ笑みを浮かべる。見ている人もいないのに、失敗には照れてしまう。
ゲンマがこの部屋に引きこもって何年になるだろうか。少なくとも三年にはなるはずだが、それから数えていない。
ずっとゲームをしている。プロを目指す気はない、あくまで趣味。或いは、スマホを見ているか、寝ているくらいのものだ。金に困ったことは一度もないので、構わないだろう。何せゲンマは偽物の紙幣を作る天才なのだ。金は稼ぐものではなく作るもの。それがゲンマの認識であった。
お金があれば、自由になれる。
「助けて!」
スマホの画面の中では、一人の女が逃げている。街灯は点滅し、そのわずかな光に蛾が群がっている。今、まさに起きている現実なのに、スマホを通すことで、パニック映画を観ている感覚だ。
女の後ろから、別の人間が追いかけている。走るでもなく長い足を速足程度の速度で動かして。女が余りに慌てていて、足をもつれさせたり、躓いたりしているせいで、追いつくために慌てる必要がないのかもしれないし、この人間にとっては、このように人を追う機会も少なくないという余裕も見て取れる。
追っている人間の服は、中世の貴族のような装いだ。深い緑色のジャケットは、細身のシルエットを強調し、胸元には繊細なレースがふんだんにあしらわれている。フリルのついた白いブラウスが、優雅な雰囲気を醸し出し、ジャケットの下から覗く。黒のテンブーツが足元を引き締め、全体のコーディネートを完璧に仕上げている。彼女の頭には、小さなシルクハットが斜めにかぶせられ、チェーンと花のコサージュがアクセントとなっている。薄暗い光の中で、その姿はまるで絵画から抜け出したかのように美しく、見る者を魅了してやまないだろう。
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