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伝令を頼まれた者は、護衛隊が引き受けてくれるか半信半疑だったが、剣士の言葉を信じて馬を走らせた。
「さぁ、時間がないぞ! ちょっと急かせるが、ここを乗り越えれば、あとが楽になる」
剣士は幹部たちを見渡して、言葉を続ける。
「このなかで、湖賊の防壁の工事を担当した者はいるかい?」
剣士の問いかけに、二人の幹部が出を上げた。
「よし、君たち、人数は任せるから、湖賊の防壁の石を運んで、山頂のこのあたりに防壁を二段ほど造ってほしい」
と剣士は、防壁を移築するにあたって、細かい注文を付けた。
「それともう一人、山頂で湯を沸かす準備をしてほしい。誰かいないか?」
剣士の問いかけにひとりの幹部が手を上げると、この幹部にも剣士は細かい指示を与えた。
「よし、残りの幹部は手分けして、木を切りだして防壁を造って行こう! 山の裾から二段目くらいまで造れるだろう。その後は、戦闘する班と防壁を造る班に分かれて、バルマン勢に応戦することになる。それまでは、防壁造りに集中しよう」
その後も剣士は指示を出し、見張りの者が遥か彼方にバルマンの先遣隊の姿を確認した時には、山裾のほうの備えを終えていた。
あとは護衛隊の到着まで耐えればよい。
ヤマガミの一党は、ここでも剣士の指示によく従った。
近ごろ山砦のやさぐれていた雰囲気が薄れ、活気が以前とは異なっていることに気づき始めた者もいる。
それは喜ばしい変化だったが、その矢先にバルマン党が押し寄せてきたのだ。
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