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狼男たちは剣士の腰間がキラリと光るのを見た。
瞬く間に敵の手首や腕が飛ぶ。
剣の勢いに、たちまち包囲が崩れていった。
その隙間に、ようやく、狼男たちが割って入った。
すでに意識を失っているヤマガミの巨体を必死に引き摺り、担ぎ上げ、自陣に引き込んだ。
剣士はバルマンに肉薄するが、バルマンはヤマガミ側に後続部隊の到着したのを見ると、さっさと退却の命令を出した。
「ふん、面白れぇ奴だな。お前ぇ、何者だ?」
剣士は返事の代わりに剣を突き出す。
「俺は、やばい相手とは戦わねぇんだよ」
バルマンは身をひるがえすと、見事というべき早さで逃げていった。
一方、砦に引き揚げたヤマガミは瀕死の状態だった。
防具を身につけていたヤマガミの巨躯をもってすれば、どうということのないほどの矢傷のように思えた。
ところがヤマガミは意識を失いながらも、全身から滝のように汗を噴き出し、身を震わせていた。
矢にはご丁寧に毒が塗ってあったようだ。
剣士が傷口周りの毒を洗って、応急処置を施す。
狼男たち幹部が見ていても、気持ちの良いくらい適切な手際だった。
剣士がいなければ、ヤマガミは死んでいたに違いない。
剣士は手紙を書くと、急ぎロウライに医者を呼びに行かせた。
未明になって、ヤマガミの容態が落ち着いたと思ったのもつかの間、バルマン党が押し寄せてきたとの報を、見張りの者が知らせてきた。
ヤマガミが瀕死なのを機に、山砦を落とす算段なのだろう。
ここでも剣士の動きは素早かった。
剣士は山砦の幹部達を率いて、山裾に下りるとまず最も早く馬を飛ばせる者に隊商の護衛隊を連れて来るよう、伝えた。
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