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眼前に迫るウトゥの姿に気づいたバルマンが、手にした剣を抜いたとき、自分の両腕が空中に飛んでいくのが見えた――。
バルマンは自分の腕が斬られた瞬間、均衡を崩して地面に倒れた。
からだからどんどん血が失われていく。
バルマンは地面に仰向けになった。
目の前には、青い空が広がっていた。
――やっと解放された気分だ。
そういえば、はるか昔――自分の両親を殺して家を飛び出したとき、大の字になって寝転がった大地で、同じような解放感に浸っていた。
あのときも青い空が広がっていたのを思い出す。
――結局俺は何に抗っていたんだ?
空が消えて、自分を見下ろすウトゥの姿が見えた。
「もう……終わりにしてくれや……」
そのつぶやきに、ウトゥは頷いてくれたようだった。
その頃、剣士の合図とともにヤマガミ側は最後の防壁から熱湯を流して防壁に近づくバルマン勢をひるませた。
侵攻の勢いが衰えたところに、防壁の要所要所に組み込まれた巨石を、ちからを合わせて転がした。
巨石は斜面を跳ねながら転がり落ちていき、進路にいるバルマン勢をつぶしながらすぐ下の防壁に激突した。
巨石の勢いは衰えることなく、さらに転がり落ちていく。
剣士が上部の防壁が石で造るように指示した理由がこのとき判った。
石積みの防壁は巨石に破壊され、雪崩となって斜面を落ちていく。
バルマン勢は転がり落ちてくる石の下敷きになったり、防壁と落石との間に挟まれたりして、大混乱に陥った。
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