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剣士が手にした剣を空中で振り、ヤマガミ勢に逆落としの合図を出す。
ヤマガミ勢は鬨の声をあげ、かろうじて生き残ったバルマン勢に襲い掛かった。
山裾のほうでは、バルマンを討ち取った護衛隊が逃げてきたバルマン勢を屠った。
ヤマガミ勢と護衛隊との挟み撃ちに遭い、バルマン勢は壊滅した。
はるばる王都から治安部隊が到着した。
百人ほどの隊員たちが、ヤマガミ党とバルマン党の抗争の顛末を調べにきたのだ。
治安部隊が到着したことで、ヤマガミ党の幹部たちは、とうとう自分たちもお縄かと思ったが、治安部隊は、バルマン勢とどのように戦ったのかを聞き、現場検証はするものの、山砦の連中を咎める様子がない。
不思議に思ったら、何のことはない、自分たちが「先生、先生」と親しく接していた剣士が、実は王都守護庁の長官代理、つまり治安部隊を束ねるトップだったのだ。
度肝を抜かれるとはこのことだ。
剣士の正体を知って直立不動の姿勢で横一列に並ぶヤマガミ党の幹部連中に、剣士はたった一言、「ヤマガミを見舞うぞ」と案内させた。
ヤマガミが眼を開けた時、目の前に幹部連中が行儀よく並んで座っていた。
ついぞお目にかかれない光景に、視線を彷徨わせると、剣士の姿が目に入った。そのとなりには、禿げ頭の漢がいた。
「おお、ウトゥさんか? 久しぶりだなぁ」
古い友人を見かけたようないい様に、ウトゥは苦笑いを返す。
「おいおい、いつもは俺たちを襲っておいて、ずいぶん馴れ馴れしい挨拶だな」
「いいじゃねぇか、俺様はいまとても気分がいいんだ。おっと、いけねぇ! 先生にも、いろいろ世話になりやした」
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