2人が本棚に入れています
本棚に追加
ヤマガミは律儀にも上半身を起こして、頭を下げようとする。
「おい、無理するな。まだまだ安静にな」
幹部たちは、ヤマガミと剣士のやりとりをハラハラしながら見守っている。
「おい、お前たち、どうした? 神妙な面並べやがって! いつもの元気はどうした?」
「へい、それがですね……」
幹部を代表して狼男が、ヤマガミが毒で倒れてからのいきさつを話し始めた。
狼男の報告を聞いて、バルマン勢が壊滅した件は喜色を浮かべていたものの、徐々にヤマガミの顔色が変わっていく。
部屋にいた幹部たちも改めて身を固くする。
ニヤついているのはウトゥだけだ。
「……どうりで、先生は凄かったわけだ。完全に負けたよ。それなら、落馬した俺様を助けたりせず、そのまま放っておけばよかったんだ。そうすれば、何をしなくてもこの砦は消滅していただろ……」
ヤマガミは自嘲を交えて、皮肉った。
「阿保う!」
それはびっくりするくらいの大声だった。
「貴様の下には何人の家族がいると思ってるんだ! それを背負っていたから、皆がついてきたんだぞ! 貴様はバルマンと同類か!」
ヤマガミが息をのんだ。周りの空気が張り詰める。
「ち、ちがう……。俺様は、彼奴みてぇに腐っちゃいねぇ……」
ようやくそれだけを言った。
「その言葉、これに誓え」
イカルはヤマガミの目の前に手を差し出した。
最初のコメントを投稿しよう!