無法者の大地 - 山神の誓い - (外伝3)

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 ヤマガミはもともとこの街道の村々を相手に商売していた行商人の子であり、あるとき野盗に襲撃され、ひとりだけ生き残った過去があるという。  そのとき逃げ込んだ村で保護されて育てられたが、ヤマガミが成年に達したころ、今度は村が野盗に襲撃された。運が良いのか悪いのか、このときも彼だけが生き残った。 「それでな、ヤマガミの奴は、同じように襲撃を受けた村人を集めて、山に上がり砦を造ったんだ。それで街道を往来する連中が『ヤマガミ党』と呼び出した。ただな、山砦(さんさい)周辺の村々から食糧をもらう替わりに、それらの村々の治安を守っている。根はいい奴だよ」 「お前はヤマガミの味方か?」 「いや、時々、俺の護衛する隊商を襲ってくるので、面倒な相手だが、バルマンほどイカれた連中じゃないから、まだ可愛いってもんだ」 「あの辺りは時々バルマンみたいな連中が湧いて出るな」 「ああ、でもヤマガミ党ができてから、野盗の(たぐい)はずいぶん減ったね。やはり山砦を構える者の強みかな」  ウトゥの話を聞いて、ヤマガミ党ができる前、あの辺りで大規模な野盗の掃討作戦が行われたことを思い出していた。そのときは軍隊を派遣して一掃したというが、頭目を取り逃がしたとイカルは聴いていた。 「判った。何とかしようと言いたいが、退治するとなると付近の駐屯軍を派遣することになる。状況が把握しきれていないから、一度この目で見てみておきたい」 「こっちとしては、安心して移動できる街道にしてくれたら、それでいいんだ。協力は惜しまないから遠慮なく言ってくれ」 「ありがとう。また連絡するよ」
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