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「ひえっ」
坊主が悲鳴をあげる。しかし、ちびは攻撃をやめない。何度もなんども金髪の顔を踏み抜いた。ちびが足を振りおろすたび、金髪の身体がびくんびくんと跳ねた。
「ぎゃはははは! 十点! 十点! 十点! 十点!」
ちびの笑いが公園にこだまする。坊主たちにしてみれば、楽しいいじめをしていただけなのに、そこに本気で頭のおかしなやつが混ざってしまったという感覚になった。
「こ、こいつ、目がイっちまってるぜ」
ロン毛が言う。
「や、やめろ……」
坊主の声も震えている。
「待ってろよ。こいつが死んだら、次のやつの相手してやるから。おれはしつこいからな。今日がダメでも明日に一人、明日がダメでも明後日に一人、全員を壊すまでやめねえから」
そう言っていじめっ子をにらむ。
「ひ、ひええっ」
悲鳴をあげて最初に走り出したのは坊主頭だった。それに続いてロン毛や他の連中も走り去る。その場には、血まみれのちびと意識のない金髪、そして亀になったままのソウゴが残った。
「もう大丈夫だぞ、先輩」
その声でソウゴは初めて顔をあげた。
「きみが助けてくれたの?」
それがケンイチとの最初の出会いだった。
「ありがとな」
あるとき、ソウゴはケンイチにお礼を言ったことがある。
「おれは弱いものいじめが嫌いなんだ。弱いものいじめをしてるやつをいじめたくなる」
その台詞がソウゴにはどうにも正義の味方のものには聞こえない。そこにケンイチの正直さがあるのだろうと思った。
「おまえ、年うえに向かって遠慮なく弱いとか言うなよ」
「だって、弱いじゃん」
「うるさいな。おれは暴力は嫌いなの。でも、感謝してる」
「そんなのしなくていいよ。おれたち友達だろ」
ケンイチはそんな恥ずかしい台詞も堂々と吐く。
「じゃあ、おまえが今後困っていたら、今度はおれが助けなくちゃな。友達としてさ」
そんな彼のまっすぐさにあてられて、ソウゴもくさい台詞で返した。
「だから……」
あのときの約束を守らなければならない。そんなふうにソウゴは思っていた。
「もう! なにかあったらちゃんと相談してよね!」
マミの本気の心配を無視して着信まえのスマートフォンに手を伸ばす。ケンイチからのメッセージの受信時刻だ。
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