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「てめえのせいでおれは負けたんだぞ」 「おれたちが損したぶん、おまえが金払えよ!」  そう言って六人が容赦なくソウゴを蹴る。顔だけは守らなきゃ、両親に心配をかけてしまう。そう思い、ソウゴは両腕のなかに顔をうずめて亀になる。そんなソウゴを助けてくれたのが二歳年したのケンイチだった。 「おりゃあ」  とつぜんあらわれた黒髪のちびが金髪の顔面に飛び蹴りを入れる。金髪が後頭部から地面に倒れる。まわりにいた坊主頭たちは一瞬なにが起こったのかわからない。ケンイチが笑う。 「ぎゃはは。なあ、これ何点?」  地面に倒れたまま鼻血を出して動かない金髪を指さす。その姿を見て、坊主頭たちはこのちびが自分たちの敵であると気づいた。 「てめえ!」  ターゲットをソウゴからちびに変更する。最前列のロン毛がちびに手を伸ばした。ちびは身体を開いてそれをかわす。まえのめりになったロン毛がたたらを踏む。ちびはがら空きのロン毛の股間に拳をねじこんだ。 「かはっ」  ロン毛が腹をおさえて膝をつく。ロン毛の顔の位置が落ちる。その中心にちびの膝がまっすぐ入る。ロン毛は腹をおさえたまま地面に転がる。 「また十点!」  ちびが楽しそうに笑う。しかし、そこまでだった。坊主以下、残りの四名がちびに殺到する。両脇をかかえられ、ちびの腹に拳がねじこまれる。 「ごほっ」  そのあとはさんざんだった。立ちあがったロン毛をふくめた五人から殴る蹴るの暴行を受けたちびが地面にのびるのに五分とかからなかった。 「てめえも明日からターゲットだ。覚悟しろよ」  坊主頭が捨て台詞を吐き、うしろでのびている金髪を起こそうと背中を向ける。その瞬間、ちびは勢いよく立ちあがり、坊主をこえ金髪のもとにダッシュする。 「死ね!」  そして、なんの躊躇もなく意識のない金髪の顔を踏み抜いた。ぐちゃりと鼻が潰れる音がして血が吹き出す。
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