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「明日、ルナちゃんとデートすることになった」  今回ソウゴは、ケンイチの七十二回の自殺の原因がルナにあるのではないかと考えていた。ソウゴは今まで、二人の初デートに干渉しなかった。自殺現場にルナの姿がなかったからだ。しかし、出会ったばかりのルナが関与していると考える方が自然に思えた。 「それならば……」  二人のデートに先回りして、自分が干渉し過去を変えることで未来に変化があるかもしれない。翌日、ソウゴは変装して二人のあとをつけた。デートコースと内容については、過去に何度も聞いている。二人は道玄坂のラブホテルにフリータイムで入って夕方にセンター街の居酒屋で軽く酒を飲んでわかれる予定になっていた。ソウゴはこっそりあとをつけ居酒屋に入った。 「今日は楽しかった。それに気持ちよかった」  あいかわらず恥ずかしいことをケンイチは楽しそうに話す。 「またデートしようよ」  ルナもまんざらでもないようすだ。 「いつ?」  まえのめりにケンイチが言う。 「うーん。そうだな。三十一日はどうかな? でも誰にも内緒にしてほしいな」  ビンゴだった。ソウゴの身体に電流が走った。やはり、そういうことだったのか。ケンイチはあの日、ルナと一緒にいた。そしてなんらかのトラブルに巻きこまれ命を落とすことになったのだ。 「よし」  今度こそ、絶対に助ける。ソウゴは八月三十一日、現場方面に向かう二人を追った。  しかし、そこでソウゴの予定が狂う。二人が向かった先は自殺現場になったビルではなく、その二つとなりにある前回と同じラブホテルだったのだ。時刻は十一時二十五分。ソウゴがきょとんとしていると、五分後に遠くから女の叫びが聞こえた。 「きゃあああ!」  それは何度も聞いた台詞だった。ソウゴはいつものビルに向かって走る。ビルのまえには頭をぱっくり割ったケンイチの死体が横たわっていた。 「どうして?」  ラブホテルに入ったはずのケンイチが二つとなりのビルのしたで死んでいる。その理由を探す。 「あっ」  その疑問の答えは頭上にあった。現場のビルととなりのビルがわたり廊下で繋がっている。そして、そのとなりのラブホテルは非常階段同士で隣接している。  もしかして二人は、人目をごまかすためにわざとラブホテルに入り、そのまま二つとなりのビルに移動したのではないだろうか。そして、そこでトラブルが起きた。死体のまえに立ち尽くすソウゴのわきをアタッシュケースを持ったチンピラふうの男が走り去る。
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