終わらない迷宮の中で

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これまでに経験した数々の罠と、彼女の科学的直感が、この異常な空間が敵の仕掛けた「幻影空間」であることを告げていた。 彼女は一瞬もためらわずにポーチから「分子デジタルダガー」を取り出した。このダガーは、彼女の手の中で小さく鋭い光を放ち、その刃は分子レベルで物質を分解し、再構築するためにプログラムされている。 サラはダガーを握りしめ、目の前の空間を一気に切り裂いた。ダガーが空中を走ると、その軌跡に沿って砂漠の風景が一瞬でデジタルの断片に崩れ去っていく。無数の光の粒子が飛散し、目の前にあった広大な砂漠がまるで砂時計が崩れるように、無音のまま消滅した。 次の瞬間、幻影の裏に隠されていた実体が露わになった。サラの前に立ちはだかっていたのは、ただの壁だった。硬質な金属の冷たさが、空気を通して伝わってくる。 サラは息を整え、先へ進むためにダガーを再び収めた。この一瞬の間にも、彼女の頭脳は次の罠を予測し、対策を講じる準備を進めていた。幻影は消え去ったが、彼女が本当に目指すべき道はまだ遠い。その先には、さらなる困難が待ち受けているに違いなかった。
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