佐野部長代理と部員の久木田さん

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 ジャキッ。  振り返りざま、男と女は同時に手にした獲物を互いに向け合う。どちらもスーツ姿の右手に握られていたのは、黒光りする銃。  生き残れるのは一人だけ。 「君を撃つのは、僕の本意ではないが・・・」 「構いません」  苦し気な男に比べて、女の方が潔かった。 「薬は一人分しかないんです」 「そうだな。譲れない以上、やるしかない」 「ええ。存分に戦いましょう」  二人の視線がぶつかり、火花を散らす。 「人類の未来のために!」 「よしカット!」  映画監督なのかとツッコミたくなるほどキレよく叫ばれたけれど、私たちがいる場所は撮影現場でもなんでもない。ただの市民体育館で、私たちは演劇愛好会の先輩と後輩で。ステージの上で、先輩が書いたオリジナル脚本を読んでいただけだった。ト書き込みで。 「最初はこんなカンジだろ。それで、ここに至るまでの経過に戻るんだけど」 「はい」
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