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「そんな単純な仕組みなら苦労しないよ」 「だよねえ。恋ってつら」  恋は素敵なもの、なんて言い出したのは誰だろうか。  きっと顔もスタイルも良くて、告白はするよりされるほうが多くて、たくさんの恋を成就させてきた人なんだろう。  だからわからないんだ。  実らないまま熟れていく恋心を抱えて歩くのは、こんなに重くてしんどいのに。 「……でもまた告白しちゃうんだろうなあ」  美月のつぶやきに、私は顔を上げた。  後ろからでも彼女が窓際の席を見つめているのがわかる。 「()りないねえ」 「ほんとに。たぶんバカになっちゃってるんだと思う」  はは、と丸まった背中から空っぽの笑い声が聞こえた。 「もしかしたら時間が経てば今の気持ちも変わるかもーとか、告白の数だけ私のこと意識してくれてるんじゃないかなーとか、そんな都合のいいことばっか期待してまた告白しちゃうの。ほんとバカだよね」  とうとうと語る美月の声を私はただ聞いていた。  最初からうまくいくことを確信している告白なんていくつあるだろう。  うまくいかないかもしれないのに告白に踏み切るのは何故か。  あるかもわからない奇跡を期待してしまう。恋ってそういうものなのかもしれない。 「うん、バカだね。恋愛バカ」 「人に言われると傷つくぞ?」  美月は今日もバカみたいに眩しい。でも私はそれを伝えることはしない。  ありもしない奇跡には一ミリも期待していないからだ。
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