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「ねえ瑠香。あと一回、ってあと何回使えると思う?」
「あと一回でしょ」
そうだよねえ、と笑う美月にはどうも私の言葉は響いていないようだった。
だってまだ彼女の視線は窓際の席の彼、葉原くんに釘付けだ。
「また見てる」
「はっ、つい」
「この前フラれた人のことよくそんな見れるね」
「まあフラれるの三回目だし。あれ、四回目だったっけ」
「負けに慣れ始めたら無敵ね」
美月はこの高校二年間で彼に何度か告白して、その度フラれていた。
葉原くんに恋人がいるわけではないが「友達以上には見られない」そうだ。
「わたし、あと一回だけ告白しようと思うんだよね」
「何回目それ」
「細かいことはいいの。あと一回だけ、って思えば勇気が湧いてくるんだから」
「崖っぷち感あるもんね」
「そういうこと」
美月は頷いて口角を上げた。彼女の視線の先にはまた彼がいる。
いいなあ、と思った。羨ましい。
恋する乙女らしい熱視線も、それを受ける彼も。
「美月」
「ん、なーに」
私が名前を呼ぶと、美月はこちらを向いた。
ぱちりとした二重瞼にくるんとカールした睫毛。はじめてまつパしたの、って嬉しそうに話してたっけ。
恋をすると女の子は綺麗になる。
そんなありふれた格言通りに素敵になっていく彼女は眩しいくらい輝いて、私の視界は真っ黒に眩んでしまう。
「今日もかわいいね」
「ふっふっふ。昨日ヘアオイル良いやつにしたからね。女度上がってるでしょ」
片手でさらりと髪をなびかせてみせる美月。
それを見て笑いながら両手でカメラのポーズを作る私。
今日も私は彼女のクラスメイトで、一番の親友だ。
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