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「フラれたのね」 「まだ何も言ってないのに」 「フラれてないの?」 「答え合わせってときどき残酷だよね」  まだ暖房の効いていない教室で首にマフラーを巻いたままの美月が机に突っ伏していた。  私はブラウンの手袋を外して自分の鞄にしまう。 「クリスマス需要でなんとかなるかと思ったのに」 「それで決められるのも悲しくない?」 「もうなりふり構ってられないよ」 「今回はどんな告白したの」 「あのね瑠香、告白ってドストレートが一番なんだよ」 「成長したねえ」  私は冷えた指先で美月の頭を撫でた。  なによ、と美月は不満げな声を出すが拒否はしない。寒さのせいか、今日の彼女の髪はいつもより少し乾燥していた。 「でもさ、もうやめようと思う」 「え?」 「告白するの、やめる」  机の上で組んだ腕の交点に顎を乗せた美月はじっと天板の真ん中を見つめていた。  そこには何もない。そんなこと関係ないのかもしれない。  ただ彼女は焦点の合わない瞳を揺らしたまま言葉を続ける。 「もう無理かなあって思っちゃって」 「そんなの今更じゃん」 「そうなんだけどさ。でもそうじゃなくて、なんていうか」  美月は天板の木目を数えるかのように机をずっと見つめている。  私は窓際の席をちらりと見た。いつもどおり葉原くんはそこにいて、友達としゃべって笑っている。 「葉原くんが悪いわけでも、なにかを言われたとかでもないの。完全に自分の問題」  私の視線に気付いたのか、美月は苦笑をこぼした。  まだ冷えている教室に彼女の吐息が白く漂う。 「もう何回告白してもダメなんだから、あと何回告白しても無理なんだろうなって思っちゃったんだよね」
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