雪男純情秘話

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僕が中学生の頃の冬の話しだ。 雪が積もって興奮しながら、飼っている柴犬のコロを連れて裏山へと 登っていった。 小さな山だし、何度も散歩している慣れた場所だ。 だけど雪で真っ白な中で方向を見失ったうえに、コロが走り過ぎて リードが外れて、どこかに行ってしまった。 「ここ、ど、どうしよう、コロ、コロ......」 半泣きで山の中を歩き回った。 そしたら。 「コロとはコイツか?」 真っ白いコートを着た青年が、コロを抱いて立っていた。 女性かと思うほどの綺麗な顔立ちの痩せた人だった。 「コロ、コロ!」 青年の腕から離れたコロが駆け寄ってきた。 「ありがとう!お兄さん!ねえ、帰り道はどこ?」 「どこに帰りたいんだ?」 「こっちの村」 山を境にして、村と村がある形状だ。 「それなら、そこから真っ直ぐ下りていけばいい」 「わかった、ありがとう!」 「話すなよ」 「え?」 「俺に会ったことは誰にも話してはならない」 「どうして?」 「どうしてもだ」
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